2001-1-17 (木)

[阪神大震災2002]



今日は阪神淡路大震災7年目。昨年一昨年とこのサイトを開いてから毎年書いてきました。今年は少し具体的に考えます。

「開発主義神戸の思想と経営」広原盛明編著
この本では戦後神戸市政がどのように行われていたのか開発主義の観点で整理しています。

この本では、戦後の株式会社 神戸市とよばれた神戸市経営を市長の個人的背景から以下の様にまとめています。

原口市政 植民地型開発経営 (開発主義)
宮崎市政 開発主義 +社会主義的経営 

経営を見るためにはどんなビジネスモデル(儲け方)によって存在していたのかを把握しなければなりません。

この本では、神戸市政のビジネスモデルを以下のまとめています。

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<戦後復興時代の原口忠治郎市長>

公共デベロッパー方式
土地経営の方法が採用され、地価上昇による開発利益が公的に還元されるシステムを作り上げた<<

戦後の港湾開発は、〜山を削り海を埋め立てる公共デベロッパーによる経営〜市街地の再開発のような権利調整などの難問は少なく、行政主導で効率的に事業が行え、インフレメリットで収益を上げることができた<<


<神戸市株式会社時代の宮崎辰雄市長>


(神戸型)経営は「最小の経費で最大の市民福祉」を理念に掲げ、自主的主導の管理の経営を展開したことから、一見すると福祉を最優先し、企業的手法による効率的な行政管理と、中央政府から自立し産業界主導でない都市経営である。との印象を多くの人々に与えた<<

神戸市株式会社という比喩は、片山の考えた社会主義実現の独立の法人という理念の上にあるのであって、たんに、神戸市が利益追求の民間法人と同じという意味ではないであろう<<


<実際の統計結果>
普通建設事業費の市民所得に対する割合 5大都市比較 
70年〜90年一位 神戸市

市民福祉の都市財政に占める割合 5大都市比較 
70年〜90年 最下位 神戸市

<阪神淡路大震災以降の市政>

神戸市一人あたりの市民所得は、震災後、大幅にダウンし政令指定都市中最低となっている<<

政令市・東京都の官公需中小企業発注実績金額比率のように95-97年までの神戸市の公共事業のうち中小企業発注は31%にすぎない。この率は他の大都市と比較しても最低である<<
95-97年平均 最高札幌市68.9% 最低神戸市31.0%

神戸型都市経営は「福祉のための開発」を掲げながら、実際は「開発のための開発」となり、目標であったはずの市民の福祉や市民生活の安全を保証する防災体制は、基準以下となり大震災で多くの二次災害を出す要因となったのではあるまいか<<

空港建設の事業可能性の決め手となる経営採算上の根拠に関しては仮定の数字しか示すことができず、そこには「株式会社」とまで称されたかつての敏腕の都市経営官僚の姿はない。「私的利害関係」にしか関心を示さないはずの市民が神戸市の「全体利益」を真剣に考え、市民の「全体利益」の擁護者たるテクノクラートが特定業界の「部分利益」を追求するという皮肉な逆転現象が生じているのである。<<

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神戸市は、山を削り海を埋める開発を行って、インフレによるキャピタルゲインから利益を得るビジネスモデルをもっていたといえます。宮崎市長時代は革新市政(共産党が与党の市政)になりましたが、開発で得た利益によって福祉を充実させるというビジネスモデルで市政を運営しました。しかし結果としては福祉は十分でなかったと分析しています。

この本では戦後から現在までの神戸市経営を詳細に分析しています。しかし「福祉都市であるべき」「住民参画都市であるべき」という左より、オンブズマン的な視点が多すぎ強引な話多いようにも感じさせらます。

神戸市政は、開発優先である。しかし市民の求めているものは福祉である。阪神淡路大震災以降を見れば市官僚の政策は行き詰まっているのはあきらか。真に市民を参画させた協働市政を行わなければならない。

というのがこの本のこれからの市政のあり方とまとめられるでしょう。

しかしこれは昔から言われている左右対立の話で長い間言われ続けていますが、全く実現していない話です。この話は双方が言い争うだけで全く解決の方向が見えません。少しずつ妥協しながら事を進めるので問題はまったく解決していません。

この根本原因は開発と福祉が対立しており両立できないと考える「考え方」にあります。

昨日は公共団体を企業としてとらえ、会計、経営を考えました。
まとめると、

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公共団体はサービス業社であって民間企業と同様に考えられる。
<会計>
売上高=税収 外注費=建設投資、福祉投資、教育投資等 借入金=国債等

借入金の原因=売上回収期間の長さ + 在庫的建設投資
組織:営業部=政治家、経理部=財務省、製造設計部=国土交通省等

健全性=財務諸表がないので判断不能

サービス業社である公共団体は、建設福祉保安などサービスを提供することにより個人企業所得を増加させ、売上高(税収)を増加させるビジネスモデルを確立し、経営を行わなければならない。

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このような形で考えました。こう考えると、福祉サービスも、建設投資も提供商品の品揃えであり、特に対立していません。限られた人物金を使って最大の売上高(税収)を得られる組合せ(プロダクトミックス)を行えばいいのです。

道路も必要ですし、福祉も必要です。貧しい人が病気になりそれをほおっておいたら働けませんので売上高(税収)は得られません。道路がなければ経済活動に多くのコスト負担を掛けることになりますので売上高(税収)は減ります。

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<開発主義の終焉>
インフレ期待の開発デベロッパー方式は資産デフレ環境では利益が出ないことはあきらかです。官庁は開発デベロッパービジネスモデルを捨てる必要があります。儲からないことをしていては倒産してしまいます。

公共建設業界の元請は官公庁です。元請メーカーが全く売れる見込みのない製品を作る方針を変えない場合、下請会社は従っていては自社も巻き込まれて破綻します。


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<市民参画経営>

企業的自治体経営を前提に、市民の参画を考えます。
市民は自治体の顧客です。市民参画の経営は、マーケティングリサーチを詳細に行う、121マーケティングといった物に近そうです。
顧客の声を無視していくら頑張っても品物は売れません。市民(顧客)の意見を聞くのは当然です。

更に進めばデルコンピューターのように仕様を顧客に決めてもらってから組立を行うBTOも考えられます。
市民の声を完全に取り入れ受注生産方式市政に転換できれば在庫(不要な箱物)は減少させられ、必要運転資金を減らせそうです。

しかし最終的に経営判断するのは企業(官庁)です。客に言われるままのご用聞き営業・製造をしていればいずれ破綻します。

こう考えると市民と協働する市政というのは疑問に思えます。

ITを使ったSFAなど詳細なリサーチ(マーケティングリサーチ)を行い、顧客に買われるサービスだけを提供。在庫削減・必要運転資金削減を実現しなければなりません。
このようなITを使ったリサーチができれば、現在営業を担当している御用聞き営業さんは解雇していいでしょう。

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<災害対策>

阪神大震災に限らず災害が起これば、被災者の所得に大きく影響を与えます。阪神大震災以後神戸市の個人所得平均が5大都市最低まで下がった事で明白でしょう。
これは公共団体の売上(税収)が下がると言うことですので、事前事後の対策サービスを提供する必要があります。

地震など災害自体を止めることはできません。よって事前事後の被害減少サービスを提供するしかありません。

構造物だけでなく、消防・警察・都市計画・ケアハウスなど様々な対策が必要になりますが、人物金の制約が当然あります。

むやみやたらに建築規制を高めて構造物にかかるコストが上昇しては、導入できる部分が減るので効果が下がってしまいます。実際阪神淡路大震災では補修をしていない古い建物が多く倒壊しました。
「何故補修がおこなわれていなかったのか」そこ解決しなければ効果は上がりません。

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建設業のかかわるインフラ提供サービスに絞って考えると、限られた人物金の資源の中で、最大の効果を上げるためにはインフラ提供・補修のQCDを常に高めていかなければなりません。

QCDを高めるためには一体何をしなければならないのでしょうか。

・今の公共発注方式で最大の効果が上がるのか。
・官庁が作る立場にあって技術革新ができるのか。
・現在のように建設業界は官庁の下請の立場に甘んじていてQCDを高めることができるのか。
・建設業界は下請として官庁に経営を任せていてよいのか。

官庁・民間にかかわらず建設業にかかわる人は、最適なサービス提供のあり方を今一度考えなければならないのではないでしょうか。

私はインフラのQCDを高めるためには技術革新が進まなければならないと考えています。土木技術・建築技術そして経営技術。
技術革新には競争が必要です。競争のない官庁や大学の研究所では不可能です。

阪神淡路大震災から7年が立ちました。報道もかなり減り皆の記憶から忘れられていきます。更に財政状況の話を聞けば公共工事費の削減は止められそうにありません。

しかし災害は事実であって、その後多くの人が所得減に苦しんでいます。

そんな環境で一体自分に何ができるのでしょう。

昨年も書きましたが、仕事とは「問題を解決する行動」です。ビジネスとはそれを継続的に人のために行うことです。問題が解決できれば対価を払ってもらえ儲けられます。

儲けるためには何をしなければならないのか。閉塞の中の建設産業から抜け出すためには、それぞれの立場の人が、何のために仕事するのか再度考えビジネスモデルを作り直さなければなりません。



2002/1/16>>

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