コアコンピタンス経営
作成日 1999/5/28
改訂日 2000/12/27
Ver.1.5

●ハメル&プラハラード

90年代アメリカの経営は、企業を成長させる戦略としてM・ポーターの競争戦略の実践を行ったが殆どの企業が成功することが出来なかった。綿密な戦略計画の立案が効果を生まなかったのだ。90年代アメリカ多くの会社で戦略部門は廃止になり、戦略を棚上げにして不採算部門を切り捨てるダウンサイジング・リストラクチャリング・リエンジニアリングに熱中し短期的で即効性のある守りの戦略を行ったのである。
 しかし90年代半ばにはアメリカの景気も回復成長期に入り新たな成長の戦略が求められた。そこで登場したのが、1994年9月ロンドン・ビジネス・スクールの教授ゲリー・ハメルと、ミシガン大学の教授C・Kプラハラードの著した「コアコンピタンス経営」である。



コアコンピタンス経営では、当時アメリカ市場を席巻した、キャノン・ホンダ・ソニーなどの資源に乏しい日本の挑戦者になぜアメリカ企業は市場を奪われたのかを分析している。
 ハメルとプラハラードによると、「挑戦者の側に能率や労働コストの面で明らかなメリットがあったといった些細な事ではない、挑戦者がまったく新しい形の競争のルールを作ったのだ」としている。挑戦者達は、トップ企業に追いつき追い越せとトップ企業のまねをしたのではなく、自分たちが勝てる市場そのものを新たに作ったのでのである。
 
M.ポーターの競争戦略など従来の戦略は、トップ企業を打ち負かすためには、トップ企業と自分の企業の違いを徹底的に分析(ベンチマーキング)し競争に勝つための重要な要素(CFS)を支援する仕組みを作るといったものだった。しかしハメルとプラハラードは、未来の顧客・市場・必要なサービスを見つけだし自ら市場を開拓し、既存市場そのものを変えてしまえば、自分がトップに立てることを説いたのだ。

●コアコンピタンス経営とは何か
新しい市場を作るためには、売上を上げるといった営業の努力ではもちろんない。新しい市場を洞察する力を養う必要がある。その上で次の3つを考えなければならない。

1 今後新しく追求しなければならない顧客の便益とは、どんな物か
2 そのような便益を提供するために、どんな能力(コアコンピタンス)を磨かなければならないのか
3 今後どのように顧客と接するように考えなければならないか
 
 
例えばチュウイングガムで顧客の新しい便益とはなにかを考えると、今までのガムの便益は「噛むとおいしい物」だ、新しい便益とはガムは「歯を磨く物だ」といった新しいお客さんの価値観を考えることだ。次に企業はそれを作り出す能力、技術を磨かなければならないこれをコアコンピタンスとよぶ。そしてお客さんにアピールする方法を考えなければならない。

●未来経営の青写真「戦略アーキテクチャー」を描く
さて、それでは自分の企業がどうやったらこの様な考え方で市場に挑戦できるだろう。
 それにはまず経営者が自分の企業には、他の企業にない会社独自の能力は何か(コアコンピタンス)を持っているのかを理解する必要がある。そしてその能力は、今の製品・サービスでなく他の製品・サービスにも生かせるのではないかと考える事だ。
 そしてコアコンピタンスを最大限生かすような、経営の青写真を描くのである。
 
★コアコンピタンスの確認
 
自らの独自の技術を見つめ直す。独りでも顧客がいればその人がお金を払ってくれる理由があるはずだ。その能力・技術・サービスは何なのかを確認する 
 
★未来洞察
未来を洞察し追求すべき新しい顧客の便益を考える。未来とは5年〜10年の範囲だ。そのとき今までの製品やサービスにとらわれてはいけない。この根底にある機能性についてよく考えより多くの便益を見つけなければならない。未来を洞察するためには、既存の経営者だけで決定するのは難しい。長年の経験がじゃまになってしまうからだ。若い社員、他の業種からの中途採用者、顧客の声を集めるなど幅広い意見を得る事が重要になる
 
★コアコンピタンスの拡充
自らの独自技術を、新しい顧客の便益に対応させるために更なる技術の改良努力を行う。この時中小企業であれば複数の技術を改良する事は、人物金の少なさから考え不可能だ。
先の未来洞察をこの段階で絞り込む。そして一点集中で徹底的に人物金を投入する。如何に未来を予測するか、どうやって技術を磨くかは社内、社外を問わず様々な意見を聞くべきだが、どの分野に絞り込むかは、経営者独りで決断し不退転の決意を持つべきだ。それが経営者の仕事である。
 
★顧客接点の開拓(カスタマーインターフェイスの変更)
新しい技術を新しい顧客へアピールする方法を考える。他業種他分野の人々から意見を聞き合同でアピールするなど様々な考えを持つべきだ

●中小企業の戦略アーキテクチャー
戦略アーキティクチャは、Mポーターなどの考える戦略計画書などとは違い、経営の大まかな青写真を描くだけだ。綿密な分析や手法を考える必要がないので中小企業に向いていると思う。自分の企業のコアコンピタンスを確認する事は自分の企業の力でできるだろう。
 ただ新しい顧客の便益を見つけるのは努力を要する。営業にクレーム情報をまとめさせクレームデータベース作成する事や、インターネットの利用して新しい感覚の人と出会う、そして何よりも自分の企業の社員から新しい発想を発言してもらう仕組みを作らないといけない。それを実現できるグループウェアーは注目すべきものだろう。
 そして経営者は、拡充すべきコアコンピタンスを決断する。技術・技能を拡充するのに必要なアドバイスは企業外部の人の意見を採り入れる必要があるだろう。親会社からの出向受け入れやコンサルタントの活用が有効だ。新しい顧客の接点を作るためにも、外部の知識を得る事は重要だろう。そして社内、社外へアピールするため自社のホームページに戦略アーキテクチャを公開するのも良いのではないだろうか。

●コアコンピタンス経営の未来
現在の日本の経営手法は、景気低迷、先行き不安の中、不採算部門の撤退などリストラクチャリング、リエンジニアリング、ダウンサイジングと行った考え方が主流だ。これはアメリカの90年代前半と同じである。
 アメリカのIBMは、不採算部門を徹底的にアウトソーシングし企業を小さく効率的にするダウンサイジングを行った。その中からパソコン用OSの制作をアウトソーシングさせてもらった中小企業マイクロソフト社や、CPUの制作を行ったインテル社が生まれたのである。アップルコンピューターは、従来のコンピューターの利用方法メインフレームでの活用といったものでIBMと戦ったのではない、全く新しい便益、「エンドユーザーがコンピューターを利用する」という新しい未来像を描きだし市場を作り上げ成功したのである。この90年代前半のアメリカの状況は現在の状況に似ているのではないだろうか。
 
 企業は、中小企業といえども必ずお客さんが求めるなにか能力を持っている。たった独りでもお客さんがお金を払ってくれるならば、なにか能力を持っているはずだ。顧客が減る、利益が減少するといった現象は、その能力と市場が求めている物がずれだしている事を意味する。
 そこで新しい未来の市場に適応する経営者のビジョン、能力(技術)を更に磨く、狙うべき市場に対し能力をアピールする。青写真(戦略アーキテクチャ)を描かなければならない。


★具体的なコアコンピタンス経営導入方法については
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