金融環境変化への対策
作成日 1999/12/21
改訂日
Ver.1


取引銀行の破綻や貸し渋りなど金融の環境変化が大きく変化しており中小建設業者にとっても大きな影響を与えています。「経営事項審査との関係」「金融機関の格付け」について、対応策として「経営計画の立案」「公的金融支援」について紹介します。


 
●改正経営事項審査との関係
 
経営事項審査が本年7月に改正されましたが、今回の改正では決算書の分析方法「経営状況分析」の計算方法を大幅に改正しました。この改正は倒産した大手ゼネコンなどの経営状況分析評点が決して悪くなかったのを受けて、15万建設業者の財務データ分布調査、各指標の相関調査、無作為抽出された1500社で優良・不良を的確に判別できるかシュミレーションを行う過程をへて作成されました。よって従来の経営状況分析評点よりかなり精密に経営内容をあらわす事になります。
 
新しい決算書の分析方法では12の経営指標を使って分析が行われますが、特に評点へ影響の高い指標は「純支払利息比率」(経審Y点への影響(以下寄与率)11・3%)と「有利子負債月商倍率」(寄与率17%)です。この2つの評点によって経営状況分析評点に大きく影響を与えます。
 
この2つの指標は共に借入金によって決定されることを考えると、建設省の行った優良な建設会社のベンチマーキングにより建設業の経営に最も大きな影響を与えているのは「借入金」であると言うことを示しています。
 
●純支払利息比率
(支払利息−受取利息配当金)÷売上高×100
金利が上昇する、売上が減少するなどがおこれば評点は悪化する
 
●有利子負債月商倍率
有利子負債÷(売上高÷12)
有利子負債=短期借入金+長期借入金+受取手形割引高   (社債を含む)
売上高に対して借入金が過大であると評点が悪化する

 
●金融機関の行う格付け(貸し渋りはなぜ起こるか)
 
各金融機関は貸出先について審査を行っていますが、それにともない業者の「格付け」を行っていると言われています。各付けに利用される指標は各銀行によって違いますが、旧経審で使われていた「流動比率」「総資本経常利益率」「自己資本比率」「固定比率」などの主要財務分析指標、及び「担保力」「経営者の能力」「社風」「商品力」など多岐にわたると考えられます。それぞれの金融機関はこれらを指標を独自の方法で組み合わせ5〜7段階の各付けを行っていると言われています。
 
格付a  積極貸付 格付b  貸付拡大 格付 c 維持 格付d 貸付額縮小 格付e 即時回収
 
この様な格付を決定し融資態度の参考にしています。この格付けが変化する事が銀行の融資態度を決定します。急な貸し渋りなどの原因が融資先企業の「格下げ」が原因になっていると考えられます。
 
 
●格付決定の資料
 
財務分析は企業のある一面をあらわしているにすぎず、企業体力のすべてを財務分析によって測るなどほぼ不可能です。財務分析という物は過去の企業体力しか表せませんし、決算書にあらわせない技術力や社風など企業体力、決算書の税務対策など様々な問題がある事が理由になります。
よって格付けを決定する際重要視されているのは「担保力」「経営者の能力」になります。つまり「担保は十分にあるのか」「銀行とのつきあいからどの程度の経営者の能力を把握できるか」といった物の方が、財務分析より重要な融資判断材料となっていました。
 
●大蔵省検査
 
しかしその傾向がバブル崩壊後変わってきました。銀行では「大蔵省検査」などの銀行自体への検査が数年に一回行われています。銀行が無理な貸付を行っているかどうか審査されるわけですが、ここでは提出済みの「決算書」「担保力」など定量的な資料でしか判断しません。「会社の社風」「経営者の能力」「長年のおつきあい」といった物で高く「格付」されていた会社が、検査によって財務内容の悪さを指摘される事になります。
バブル以降地価の低下により担保価値が下がっている。銀行自体の審査能力に疑問が上がっている。金融環境の悪化により検査が厳しくなっている。などにより審査において「決算書」が重視される割合が増えているのが現状です。よって決算書の悪い企業は「格下げ」せざるを得なくなり、貸し渋りを受けるといった自体になります。急に銀行の態度が変わって貸し渋りを受けた企業は、決算書が悪く検査が入って格下げが行われた可能性が十分あるのです。

 
金融問題への対策

以上のとおり経営事項審査では受注可能工事規模、銀行の各付けでは融資態度が決定されるわけですが、現状で各付けを決定されるのに大きな影響を与えるのは財務分析になっています。工事規模の決定では工事技術力・融資では経営者の能力が重視されるべきですが現状ではそれらを画一的に決定する方法論が確立されておらず定量的な財務分析が重視される結果になっているのです。よって財務内容を改善することが当面すべき重要な経営課題になります。
●経営改善の計画
 
財務内容を改善するためにはまずするべき事は中長期の経営計画を立てることです。特に金融対策では大蔵省検査など外部機関の検査では資料が決算書しかありません。銀行に中期経営計画などを提出していると検査のさいよい影響を与え「格下げ」の危険が減少するでしょう。内容云々より中期経営計画を立てていると言ったことだけでも良い印象を与えられます。また後述する公的支援を受ける場合でも経営計画を提出し審査を受けると有利な利率で融資を受けれる「経営革新支援法」の特典があります。
 
経営事項審査をふまえた上で財務内容改善計画を立てるには、より大きな影響を与えている指標「有利子負債月商倍率」及び「純支払利息比率」を改善する事が目標になりますが、
この指標の計算式を見ると「有利子負債の減少」「売上高の増加」「支払利息の減少」の3つしか改善する方法はありません。
 
●有利子負債の減少
 
借入金が必要になる局面は、運転資金の融資と、設備投資のための融資の2種類があります。まず運転資本の状態は、新経審に採用されている「立替工事高比率(経審への寄与率10.2%)」で判断できます。
 
立替工事高比率
 
立替工事高比率=(受取手形+完成工事高未収入金+売掛金+未成工事支出金ー未成工事受入金)÷(売上高÷12) ***数値が低いほどよい
 
この指標では売上をどのぐらいの期間をかけて現金として受け取るかをみています。この指標が過去3年間で悪化していないかを見て、悪化している場合売上から現金を取得するまでの期間を出来るだけ短くする対策を取れれば、必要運転資本を減少させ有利子負債を減少させられます。
 
取るべき対策
(1)受取手形の期間短縮交渉(2)中間金・着手金の増加交渉(3)資金繰情報・キャシュフロー情報を迅速に経営者へ伝える情報システムの構築
 
建設省の支援「前払金等の増額及び支払の円滑化」
 
 
●長期固定適合比率
設備投資に必要な資金も借入金の主な目的ですが、健全な設備投資を行っているかを判断する指標として長期固定適合比率(経審への寄与率9.1%)があります。
 
(自己資本+固定負債)÷固定資産×100
 
固定資産はいざ資金が必要になったとき、受取手形や貯蔵材料などと違い換金することができません。この指標が100を下回っている場合は、固定資産投資の資金に1年以内で返済しなければならない支払手形や短期借入金など「流動負債」を使っている危険な財務状態であることを示しています。このため新たな設備投資計画を立てて100を下回る場合は設備投資計画の見直し、長期借入金の調達を行う必要が出てきます。
(通常の経営分析では固定長期適合比率という指標が使われ長期固定適合比率の逆数になります)
 
中小企業庁系支援策「設備近代化資金貸付制度」>>
 
 
●売上高の増加
 
この不況下で売上高を増加させるためには技術の革新や新商品の立案など相当な努力が必要になります。このため公的支援を受けられる「経営革新支援法」にそった経営革新計画を立て売上増加を計画すべきでしょう。
 
経営革新計画で対象となる経営の革新とはその企業にとって新たな取組をおこなえばよいのですが、同規模同業種の企業がおこなっている事をしても評価されません。その点を注意してどんな新たな取組をするのか計画しなければなりません。
 
経営革新支援法で対象となる計画は3年〜5年の経営計画になりますが、承認されるためには財務的目標として付加価値額又は一人あたりの付加価値額が3年なら9%・4年なら12%・5年なら15%以上増加させる目標を立てる必要があります。
 
 
 
●支払利息の減少
 
支払利息を減少させるためには、さまざまな所で「金融機関と対決する姿勢を持て」と言った意見も掲載されていますが実際にはかなり難しく相当な覚悟がないと実行できませんし、専門家の助けは必須になるでしょう。筆者にはそのような知識もありませんので、かなり充実して行われている政府の中小企業金融対策を幾つか紹介します。
 
貸し渋り対応特別保証(中小企業金融安定化特別保証)
 
信用保証協会の行う借入債務の保証「一般保証」とは別に、貸し渋りを受けている健全な中小企業への特別保証制度
 
保証限度額 
 ・普通保証2億円 0.75%以下(取引金融機関の破綻の場合は3億円)
 ・無担保保証 5,000万円 0.65%以下(保証人を求め、担保は求めない)
 ・特別小口保証 1,000万円 0.40%以下(保証人および担保を求めない)
 
.金融環境変化対応特別貸付(金融ビックバン貸付)
 
金融機関の破綻や経営内容が悪化していないにもかかわらず、取引金融機関との取引状況が一定の変化をしている企業への貸付制度
 
貸付金利:年2.3%
貸付限度:<中小公庫>     一般貸付とは別枠で1億5,000万円
     <国民公庫・環衛公庫> 一般貸付とは別枠で3,000万円
貸付期間:5年以内、特に必要と認められる場合は7年以内(うち据置期間2年以内)
 
中小企業運転資金円滑化特別貸付
 
売上高の減少など県境変化の影響を受けている中小企業に対して一般貸付とは別枠で運転資金を貸し付ける制度。担保が不足する場合などは貸付額の50%を限度として担保設定を行わない措置などが取られている。
 
貸付金利:年2.3%
貸付限度:<中小公庫・商工中金>  一般貸付とは別枠で8,000万円  
     <国民公庫・環衛公庫> 一般貸付とは別枠で4,000万円
貸付期間:7年以内(うち据置期間1年以内)
 
以上詳細は中小企業庁「中小企業金融対策について」
 
金融対策の参考になるホームページ
 
貸し渋りを受ける中小建設業者は増加しており重要な問題で、非常に繊細な対策を必要とするものです。筆者は金融面での実務経験はありませんので具体的な改善の手法については記載できませんが、改正された経営事項審査を作成・シュミレーションしていると金融の問題に直面している各企業の姿が見えてきおり避けられない課題になっています。具体的な対策・解説などについて掲載されているホームページを掲載しますので是非ご覧下さい。
 
税理士 細野知久氏
経理実践トレーニング「無借金経営への道程 1〜5」「資金繰りを良くする経営 1〜9」
 
i-nex online 「中小企業の資金調達」
 
jnews.com銀行の貸し渋り現象の仕組みとその対策
 
中小企業庁「中小企業金融安定化特別保証制度のもうしこみの際にご注意ください!!」
 
●まとめ
 中小建設業者は「情報化(建設CALS/EC)」「品質の向上(ISO9000s)」「資金対策(貸し渋り・経営事項審査改正)」の3つの大きな課題に直面しています。この3つをそれぞれバラバラに対策するのではなく、一つの経営計画に盛り込んで3〜5年のうちに経営の基盤を確立しなければなりません。
 そして最終的には他社とは違う「経営革新支援法」でいう所の新しい事業活動・コアコンピタンス経営でいう戦略アーティクチャーを見いだす計画を立てることが重要ではないでしょうか。
 
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