人の能力向上方法
作成日 1999/5/27
改訂日
Ver.1

「企業は人なり」「企業成績は人・物・金で決まる」とかよく言われ人の管理が企業経営のもっとも重要な物であるのはまちがいないでしょう。しかし思ったほど労務管理の分野で即導入できる理論は少ないように感じます。
その中でも自分が最も整理されわかりやすい理論と感じたT.ギルバートの「ヒューマンコンピタンス」についてご紹介します。

「ヒューマンコンピタンス」では、まず「人の能力とはなにか」を定義し、「人の能力を測る方法」を明示しています。最後に「会社は人の能力を向上させるにはどのような順で考えるべきか」をまとめています。この最後の順番の定義は非常に明確で労務管理の骨組みを理解するのに役立つと感じました。

この骨組みを理解しておけば、具体的な戦術である賃金体系の構築、ナレッジマネジメント、オープンブックマネジメントなどを理解しやすくなるでしょう。
 
 
●トーマス・ギルバート「ヒューマンコンピタンス」
労務管理の権威とされている心理学者トーマス・ギルバートは「ヒューマンコンピタンス」の中で
1.社員の能力とはなにか(人的能力の定義)
2.社員の能力があるのかないのか(能力を正確に測定する方法)
3.会社は社員の能力を高めるために何をすべきか(人的能力を活用するためのモデル)
を紹介しています。
●人的能力の定義
まず人の能力とはいったい何でしょう。人の能力がどんな事か
わかっていないとどんな対策をとっても成果を測る事はできません。
これについてギルバートは以下のようにいっています。
人的能力とは、潜在能力と余裕であり
余裕は、余裕=時間×機会によって生み出されるとしています。
 
■ギルバート 人的能力の定義
「人の能力とはそもそも何か」これについてギルバートは余裕を追求する事としている。余裕とは手遅れになるまでに与えられている時間であり、余裕を手に入れる方法を学び、それをより効果的に活用する方法を学べば手遅れになることはまずないと考えている。

つまり業績のエンジニアリングの目的は余裕を増加させる事であり、余裕は時間と機会から生み出されるものと定義する事ができる。いくら機会に恵まれても、それを生かす時間がなければ何の意味もない。また、何の機会にも恵まれない、もて余した時間はなおいっそう無価値である。業績のエンジニアリングの出発点は人間の潜在能力であり、最終到達点は余裕を増加させることである。
 
力のある社員がいてもに経営者が問題を解決する時間も与えないし、問題を解決する機会も与えなければ問題はどんどん手遅れになりどうしようもなくなってしまうという事です。
つまり経営者は潜在能力のある社員を雇い十分な余裕を与える努力をしなければならない・・・・なるほど
●人的能力の測定方法
ギルバートは社員の能力を計算する方法を示すとともに、会社は誰に対して支援すればよいのかを計算する。業績の低い所を支援する方が効果があがるとしている
 
人的能力の測定        成果=成果÷行動
 
向上の可能性の判定     PIP=最優秀の人の成果÷ある人の成果
 
ギルバートは社員の能力を「成果=成果÷行動」という式で表せるとしている。
たとえばあなたが時給1000円で1000円分の部品を作れるとするとあなたの成果は「1」であると計算できる。
これを同じような仕事をしている人も同様に計算してみる。すると最優秀な人は時給1000円で1010円生産しており成果は「1.01」であった。
 
これをあなたが劣っているのだと悲観的に考えるので意味がない。これをあなたは少なくとも1.01倍の業績を上げられる可能性があると考えるのである。この「1.01」という数値を業績向上可能性(PIP)とよぶ
 
このようにPIPを様々な角度から分析する。たとえばあなたの上司を分析してみる。あなたの上司の統括する作業班は1という成果をあげている、最優秀な作業班の上司は5という成果を上げていたとしよう。
この場合上司のPIPは5になる。つまり業績向上可能性は5ある。
 
この作業ラインの場合、上司のPIPは5であなたのPIPは1.01であった。
業績を引き上げられる可能性は、上司は5であなたは1.01だ。
これは会社としては現場の社員に対して業績向上を支援するより上司に業績向上の支援をしたほうがよりコストも時間も掛からないと考えられるという事だ。上司の成績のばらつきは何が生んでいるのかを把握する事が急務であるとなる。
 
このような分析を行うと会社は、誰に対して手助けするのが業績向上へ
効果的かが分析できる。
●どうすれば業績をあげられるか
ギルバートは社員の能力が上がり業績を向上させるための方法として教育訓練は最後の手段としている  
不十分な業績しか挙げられない原因は、「行動のレパートリー」の少なさとそれを支える「環境」の不備の2つの要素があるとしている。
行動のレパトリーとは個人の能力であり知識・資質・動機の3つの要素に分けられる。
知識とは、経験と教育の結果でありこの知識により仕事をしている。資質とは、身体力や精神力を指し、動機とは好みや価値観から仕事に打ち込もうと言う気にさせるものだ。
 
環境とは情報・道具・インセンティブの3つ分けられる。これらは会社が社員に与えるものである。
情報とは、期待される業績や目標、目的
道具とは、器具だけでなく技術、行程、手順、組織をも含む
インセンティブとは、金銭での報酬だけでなく昇格や表彰など非金銭的なものも含んで考えている。
 
      労務管理の骨組み(行動エンジニアリングモデル)
環境的支援 情報 道具 インセンティブ
個人の行動特性 知識 資質 動機
 
ギルバートは会社に従業員の業績向上を支援する気であれば個人の行動レパートリーに着目するのではなく環境支援(情報・道具・インセンティブ)に注目する方が得策であるとし、優れた作業環境を作るには次の順で考えるべきとしている。
 
1.情報の提供
2.道具の提供
3.インセンティブの提供
4.知識の教育訓練  
ここで注目すべき事は、通常社員の能力を向上させるには4の教育訓練を一番に考えてしまうが、訓練は強力だが、コストのかかる業績改善戦略である事が多い、そのため訓練は最後に手を着けるべきものとしている事だ。情報・道具・インセンティブが十分社員の業績向上に役立っているかをまず検討する必要がある。
 
 
1.情報  誰が何をいつ知る必要があるのか
2.道具  必要な器具はなんなのか、作業方法・行程はどうあるべきか
3インセンティブ 優れた業績を導くにはどんな給与体系をとるべきか
 
業績を上げるにはこの3つをまず考えなければならないのである。
 
      労務管理の骨組み(行動エンジニアリングモデル)
環境的支援 情報 道具 インセンティブ
個人の行動特性 知識 資質 動機
 

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