ISO9000へのTOCアプローチ
作成日 2001/12/10
改訂日 2002/2/11
Ver.1.5

[何のための品質管理か]

建設しんこう12月号に「生産現場でのISO9000s運用の歪(ISOに関する実態調査報告書2000)」日建協著が掲載されています。
非常に面白い内容です。

日建協は労働組合なので現場社員の立場から見たISOという事になりますが、幾つか抜粋します。

<外勤者540名アンケート調査 有効回答399名 回答は2つ出来る>
ISO職場定着状況 
一位68% 定着しているが有効に機能していない
三位18% 定着している

ISOが定着していない又は有効に機能しない理由
一位 48% 内部監査又はサーベイランスの時しか実際にやらない

建設業がISO9000s取得する理由
一位68% 今後の入札要件等としてやむを得ない

ISO9000s導入のデメリット
一位53% 文書管理が煩雑でダブルスタンダードに繋がる

ISO9000s関係書類によって書類作成業務は初期導入以前に比べ一日辺り何時間位増えたかという質問に対しては、「1時間程度」が53.1%で最も多く、次いで「2時間程度」23.3%(中略)「減った」2%

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他にも色々ありますがデメリット回答が非常に多い。以前日経コンストラクションに掲載された特集「ISO9000の裏側」でもデメリットが非常に多く上げられており現状のISO9000sは問題があるのは明かです。

一体何が問題なのでしょう。三つほど考えてみました。

・品質マニュアルに問題がある
ISO9000sには具体的にどうしろと書いてあるわけではありません。どうするのかは各企業が決めて品質マニュアルを作ります。そのときに悪い管理方法・悪い品質マニュアルを導入すれば当然デメリットばかりになります。

・ISO9000規格自体に問題がある
ISO9000sはヨーロッパ主導で決められました。品質管理で最も優れた管理手法を作り出していた日本でもなければ、アメリカでもありません。2000年版発行に際してかなりアメリカからの要求が反映されたそうですが、いずれにしろトップレベルの管理手法とはとは言い切れません。(というか標準なのですが)
どんな管理手法でもそうですが2000年版のISO9000sもいずれ改正・改善されます。

・発注者側の問題
ISO9000sを発注者側が要求するならばそれを前提に発注・検査態勢を作り直さないといけません。発注者の求める書類と企業の品質マニュアルが求める資料。2つ作らなければならないようでは意味がありません。

この3つのうちどれが問題点なのか自分にはよくわかりませんが、色々な調査を見れば現在のISO9000sを普通に導入すれば管理コストが増大している事は確実です。この売上減少に悩む時代にです。

しかし現実問題発注者が求める以上ISO9000sを取得せざるを得ないでしょう。それを前提に企業側はどうするのか考えるしかありません。


ISO9000sは品質マネジメントシステムという事ですが、もしコストを全く考えずに高品質だけを実現すればいいのなら、顧客検査など最終検査時点で満足を得られなければ解体して作り直せばいいとなります。特殊工程以外は作業プロセス内で検査など必要ありません。

ISO9000sの目的が顧客満足であれば「品質確保」だけでなく「低価格」も同時に満たさなければなりません。

品質管理は一体何の為にするのかという原点に立ち戻って取得運用しないと閉塞感どころか倒産してしまいます。

[プロセスアプローチ]

昨日の「何のための品質管理か」は結構皆様興味深かったようで↓のチェックメール色々頂きました。「間違っているのでは」のメールがなかったですが「変だなぁ」と思ったらチェックしてください。

それと私ISOコンサルタントでも品質コンサルタントでもありません経営全体を考えてますのでそこのところ理解して読んでくださいね。


今日はISO9000:2000の目玉とも言えるプロセスアプローチについて

プロセスアプローチ、システムアプローチという言葉がISO9000:2000では良く出てきます。まだ審査方法の指針がはっきりしていないため明快にプロセスアプローチは何か?どう審査するのか?という問いへの答えは固まっていないように私は感じています。

ISO9000での言葉としては理解できませんでしたが、プロセスアプローチ、システムアプローチ自体はゴールドラット「ザ・ゴール」Gナドラー&日比野省三「ブレークスルー思考」など色々なところで解説されているのを読みました。

プロセスアプローチはTOC制約条件の理論では「ザ・ゴール」の中で「依存的事象」として出てきます。

・各作業はバラバラに独立して存在しているのではなくチェーンの様につながって一連の仕事が出来上がる。
・チェーンの強さは各輪の強さによって決まるわけではない。一番弱い輪によって全体の強さは決まる。
・よって全体を良くするためには一番弱い輪(ボトルネック)を中心に考えなければならない。
・一番弱い輪を強くしないで、他の輪をいくら強くしても全体の強さは変わらないように、一つ一つの作業をバラバラに改善させる考え方では効果が上がらないどころか、ムダが発生する。

という話です。

一つ一つの作業を管理する部分最適を目指すのでなく、全体を管理する、全体をプロセスとしてとらえ管理するといった事を行い全体最適を目指さなければならないいう事です。

<参考:aBUSINESS研究所TOC制約条件の理論雑感
「一生懸命やればいいわけじゃない」
「工場の生産性はボトルネック工程の能力以上は絶対に向上しない」


この考え方は生産管理の中でも非常に重大な指摘です。日本式の全員参加の改善、TQCには問題があるわけです。

TOCの理解でプロセスアプローチを行うなら、品質改善の為には、一つ一つの作業を検査などでチェックするのではなく、一連の作業の中で品質に最も影響を与える重大工程(ボトルネック)を見つけだし、ボトルネック工程を中心に品質管理を行わなければならないということになります。

全ての工程に対し同等に品質管理を行う、全ての工程に対し一様に厳しく品質管理を行う。このような考え方はプロセスアプローチをしていない部分最適な品質管理です。

例えば最終検査で全品徹底的に検査するというシステムにしているとすると、材料受入検査、設計時点の検査これらも同様に徹底的に検査するという事をすると品質管理として意味をなさないだけでなく、非常にコストがかかることになり顧客満足を得られません。

ISO9000:2000でプロセスアプローチをどう審査するのかはっきりしませんが一般的なプロセスアプローチとISO9000規格とが矛盾しないか危惧しています。

「うちは最終検査を厳しくするので材料受入検査はしません」「審査員に是正処置要求されましたが、うちは是正処置の必要性判断でボトルネック工程以外は是正しない事にしています。」
こういったケースが沢山出てきた場合どう審査するのでしょう。


[品質対コストの矛盾]

「品質の為に色々手を尽くせば高コストになってしまうのではないか」という事を考えていました。
品質管理を考える場合もまずコストと品質の矛盾を取り除いて考えなければいくら努力しても閉塞感の中に吸い込まれそうです。
<<2001/12/10(月)[矛盾だらけの世の中、、]

品質管理は一体何の為にするのかという原点に立ち戻って取得運用しないと閉塞感どころか倒産してしまいます。
<<2001/12/10(月)[何のための品質管理か]

こんな風に先日から書いていますが、じゃどうすればいいのか考えてみました。

「安かろう悪かろう」という事で、品質とコストが一見矛盾して考えてしまいますがその頭の中の構造はどうなっているのでしょう。





TOC対立解消図を使って書いてみると上記の様になるでしょうか。
・競争に勝つためには、品質確保しなければなりません。そのためには品質に掛かるコストを掛けないといけません。

・競争に勝つためには、コストダウンしなければなりません。そのためには品質に掛かるコストを削減しないといけません。

という形です。「品質コスト増加」と「品質コスト減少」は同時にすることは出来ませんので矛盾しています。

この矛盾を解消しないままISO9000などどんな品質管理をしようとも、コストダウン要請が別の所から出てきてどっちつかずの仕事になりシステムは崩壊します。

品質にうるさい客には高価格を、価格にうるさい客には手抜き工事をといった自体が発生します。品質にうるさい内部監査員と、コストダウンにうるさい経営者・経理部がいれば「サーベイランスの時だけやっときゃいいか」なんて事になりかねません。
こんな流れでシステムに投入した資金・運用費用は全てムダになってしまうわけです。

この矛盾を解決するためには、対立解消図の「←」で書かれた流れのどこかに「見方の変更」「創意工夫・アイデア」「新技術」を導入して流れを断ち切ってしまえば矛盾は解消されるとTOCでは説明されています。

「品質確保←品質コスト増大」「競争にうち勝つ←コストダウン」今まで思いこんでいた考え方は間違っていないか、改めて考えてみるわけです。

「品質コスト増大しない品質管理方法を行う」「コストダウンの必要がない非常に優れた商品を提供する」といった技術的解決方法があれば←はなくなり矛盾は解消されます。

見方を変えるという面では品質管理手法の考え方の中に、「品質管理はコストダウンのために行うものだ。」という考えがあります。

先日書いたように、コスト等を考えず100%品質満足を得られる品質確保方法は、顧客に受け渡した時に満足しなかったら解体して、もう一度作り直すとか、しばらく住んでもらって一見してわからない所まで検査してもらい駄目なら解体。そしてもう一度作る。こんな方法が頭の中では浮かびます。

もちろん支払は一つ分しかもらえませんので、こんな品質確保方法をしていたらどんどんコストがかさみ大赤字になります。

そう考えると中間検査、受入検査は、早い段階でミスをみつけ、廃棄・解体につながる品質コストを削減するために行っていると考えることも出来ます。

こういう見方になればコストダウンと品質管理は矛盾せず、むしろ品質管理をしてコストダウンするという流れになり品質システムが構築可能な状態になります。

品質コスト=不良品原価 + 管理コスト
と考えれば、「やたらに品質検査、品質管理をする事は目的に反する」「どれだけ管理すべきか投資対効果の面で検討しなければならない」とシステム構築がどんどん前に進んでいくわけです。

この考え方日本の品質管理では一般的な様ですが、ISO9000の話ではあまり出てこないようですね。



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