経審評点向上方法
(TOCアプローチ)
作成日 2001/9/21
改訂日 2002/2/11
Ver.1.5

[経審再考]

経審は12の財務分析指標を組み合わせたY点、売上高評点、技術者評点、10の評価項目をもつ社会性評点と様々な項目を分析して評点を算出します。

経審の仕組みについて解説された本を読めばそれぞれについて詳しく知ることができます。その項目一つ一つをあげていけば経審の評点を上げられるはずですが実際にはそうはいきません。

人員削減と経審」といったどちらかを良くすれば片方が悪くなるというトレードオフの項目があるから複雑です。一体何をすればいいのかよくわからなくなります。

経審は色々な指標が絡まって評点が算出されますが、経審総合評点に与える影響割合を考えると、経審を上げるポイントは4つに集約されます。

売上高を増やす 
技術者(有資格者)を増やす 
有利子負債の減らす 
営業利益を増やす

「売上・技術者が多くて、利益が多く、借金が少ない企業」これが経審の良い会社といえます。技術者という点は特異ですが、「売上・利益が多くて借金が少ない企業を目指すべき」この結論はどんな業界でも当たり前といえるでしょう。

評価割合からポイントは4つに絞られますので4つを改善するために行動すれば良いことになります。

4つのポイントを良くするための手段は色々な本がありますので参考に出来ます。

たとえば売上高を上げるために値下げをしてみます。工事数量が値下げ以上に確保できれば売上高が増加しそうです。しかし営業利益が減ってしまう可能性があります。
では、1級建築士を沢山外部から雇ってみましょう。これは給料の分営業利益を減らしてしまいそうです。
情報化投資してみましょうか、かならず経費が削減できるIT投資があったとすれば営業利益は増えそうです。しかし借金が増えてしまいそうです。

たった4つにまで絞ったのにそれでも複雑でトレードオフであるように思ってしまいます。一体何をすれば良いのか迷ってしまうという事態が発生します。

昨日書いたようにゴールドラット博士は、「現実には複雑なシステムは存在しない」「対立が起きるとすれば、それは私たちが現実に対して、間違った前提条件を考えているからだ、それを改めれば対立は解消することになります。」と指摘しています。

これを前提に経審を考えると、経審は複雑ではなく、「一つの原因」によってそれぞれの評点が増減しているという単純な形であるはずですし、「トレードオフ」の方は「間違った前提条件」が存在しているためトレードオフに見えているだけということになります。

つまり一つのボトルネックが、売上増加・営業利益増加・技術者増加・借入減少のネックになっていると考えられます。

となると経審の評点を上げるためには以下のTOCの原則を使って改善できるはずです。

1.経審評点を下げる根本原因「ボトルネック」を見つける
2.ボトルネックをこき使う
3.他の作業はボトルネックに合わせた行動をする
4.ボトルネックに投資する
5.1に戻る


経審は経営全体を見た結果指標でしかありません。経営全体に対する結果です。ならば全体最適化の考え方で経審評点を上げられるはずです。



[売上高と借入金]

経審再考で経審の4つの重点ポイントそれぞれを改善しようとすると一方を改善すると一方が悪化してしまうというトレードオフの現象が起こると書きました。

そこでもう少し詳しく見てみます。
まず売上高と借入金を見ていきます。
売上高を増やすためには、受注を増やさなければなりません。受注を増やすと運転資金が必要になります。運転資金を外部から借り入れると借入金が増えてしまいます。売上高増と借入金減がトレードオフの関係になりますのでどうすればいいのか悩んでしまいます。

TOC制約理論のゴールドラット博士によると、トレードオフに見えている現象は前提条件が間違っているためにそう見えるだけとしています。

「TOC革命(制約条件の理論)」稲垣公夫著に対立解消図というものを使って前提条件の解消を行う方法について書かれています。利用するのはなかなか難しいのですがこれにそって少し考えてみます。

まず問題の前提条件を分かり易くするため上記の前提を図示します。





従来の社会科学では、トレードオフになっている借入金の額について妥当なところでバランスさせる事を考えるわけですが、TOC理論では対立を作る前提条件をうち破るアイデアがないかを考えます。

例えば、受注が増加すれば、かならず運転資金が増加するという前提条件が図示されていますが、そうならないアイデアがあれば前提は崩れ対立は解消されます。
例えば「全額前払いで請負する方法」が考えられれば前提条件は壊れ、売上高増加と借入金減少は両立させることができます。

運転資金増加分は必ず借入金でまかなう前提になっていますが、他の資金調達方法を見つければブレークスルーする事ができます。

このように一つのアイデアを出して前提条件をつぶしてしまうことにより問題解決をはかるというわけです。

当然簡単にはうち破る方法は見つかりません。簡単に見つかるならすでに解決されているはずですから。色々発想力のある実務家・専門家などに解決方法がないかじっくり聞き対立を解消するアイデアを出さなければなりません。

参考:TOC制約理論の広場 思考プロセス




[中核問題を見つける]

昨日は、TOC制約理論の問題解決のために使う対立解消図というのを使って考えてみましたが、その前にどの問題に取り組むべきかを考える「現状問題構造化ツリー」というものが紹介されています。

TOC革命(制約条件の理論)稲垣公夫著
>>「現状問題構造ツリーとは、「どこを変えれば最小の努力で最大の結果が得られるのか」ということを明確にするための手法です。<<

なかなか現実的な答えが見つけられそうなので、早速経審が悪いという問題について「どこを変えれば良いのか」見つけるためツリーを作ってみました。


経審に大きく影響するのは、「売上高評点」「技術者評点」「有利子負債月商倍率」「売上高営業利益率」ですので、これらを改善するための中核問題を探す事を目標とします。

現状問題構造化ツリーでは、「もしAならば必然的にBである」という原因と結果をツリー状に書き出していきます。

「有利子負債月商倍率」を見てみると
「借金が多いから有利子負債月商倍率が悪い」「必要運転資金が多いから借金が多い」「工期が長いから必要運転資金が多い」といった具合に因果関係をツリーにしていきます。

<有利子負債月商倍率の現状問題構造ツリー>

有利子負債月商倍率以外の項目もツリーを作っていきます。
下から矢印のこない項目が「重要な問題」になるわけですが、非常に多く複雑な原因から起こっていることがわかります。

技術者評点のツリー
売上高評点のツリー
売上高営業利益率のツリー

ざっと経審でやってみましたら38個の問題が浮かんできました。

これらの問題の原因をツリーにしていくとそれぞれ重複しているケースがあります、例えば「外注費・材料費が高いから売上高評点が悪い、また営業利益率の悪い」といった具合に問題が整理されてきます。
こうやっていくとほとんどの問題の原因「中核問題」が見つかるというわけです。

先ほどの4つのツリーを一つにまとめてみると、それぞれをツリーは5つの問題に行きついています。

経審改善の全体ツリー


1.需要がない(工事発注量自体が少ない)
2.品質が悪い(自社工事の品質が悪い)
3.無駄な投資をした
4.施工のスピードが遅い

5.材料費・外注費が高い

この5つです。中核問題が5つもあありますが一般論としてはここまでが限界です。更にツリーを深めて原因を探らないといけないかもしれません。

個別の企業ではこのような現状問題構造ツリーを、専門家だけでなく工事技術者・営業・経理など現場の人とツリーを作っていかなければなりません。いきつく中核問題は各社様々でしょう。

一般論として言えるのは上記の問題のうち1と5は請負者の方ではなかなか対処できにくい問題になりそうなので解決すべきは2,3,4の問題あたりにありそうです。

中核問題を見つければ対立解消図を使って解決策を考え、ボトルネックを中心に5つのステップで全体最適化をはかって解決策を練っていきます。
もちろん根本原因はそう簡単には解決しません。永遠に続く継続的な改善が必要です。




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