公共工事値段の決定(99年の動向)
作成日 1999/1/12
改訂日 2001/1/2
Ver.1.5

値段とはいう物は経営で最も大事な話です。が、、経営理論の中で利用できる理論という物はあまり読んだことがありません。値段というものを真正面から捉えたコンサルタントというのもあまり聞きません。需要の弾力性や損益分岐点分析など、ほとんどが経済学ながれのような分析で実際の経営で使えるあまり多くありません。

 価格の決定方法で必ず出てくるのは「
外部要因と内部要因をすりあわせて決定する」というものです。外部要因とは競争、需要などで、内部要因はコストになります。そこで公共工事の「コスト」「競争」「需要」の新しい動きをまとめてみました。
●コスト:市場単価制度

建設業は積算というコスト積み上げを行っています。僕はまだまだ積算について分からないことだらけで分かり易い積算の話をwebや本を探していますが、以前読んだ「漫画で読む積算」では、漫画で書かれているにもかかわらず私には非常に難しく、大変な作業をしているんだなぁとしかわかりませんでした。
株式会社 高橋工務店さんにリクエストして積算について解説していただいたり、お客さんにチャンスがあれば聞いたりしているのですがなかなか。。。一回実際にやってみればわかるのかな。。建設設備ステーションの野水さんは「積算は税金の無駄か?」と言ったことかかれています。いずれにしろ建設業の場合他の産業に比べ非常に緻密な積算を行って価格を決定しています。

さて、この積算方法について新しい動きとして市場単価方式というものがあります。建設業しんこう98年11月号に建設省の神尾氏の書かれた「建築工事市場単価方式の試行について」が掲載されています。

 市場単価方式とは、元請、下請間の取引価格による市場での価格をいいます。「市場単価方式」とは歩掛を用いず積算する方法で、材料費、労務費、下請経費などを含む単位工事あたりの市場単価を調査してそれに数量を掛けることにより直接工事費を積算する方式だそうです。

この方式をとると従来の歩掛積算方式に比べ相当積算が楽になります。発注者側の効率化・省力化がはかれるわけです。また市場単価を公表する事になるので民間の取引価格が適正化する、市場価格の変化を迅速に予定価格へ取り入れる事ができるとしています。また市場単価調査を行った調査工種が本施工されると「建設省建築工事積算基準」の該当歩掛が削除され、市場単価そのものが積算に用いられるようになるそうです。
 この掲載によると建設省では平成9年度に方法を検討、10年度に市場単価の試行を行うとしています。

●競争:低価格入札制度

競争は価格に最も影響を与えるものです。公共工事の場合、ほとんどの工事が数社の企業に見積もりを行わせる「競争入札」という物が行われます。

競争入札でもっとも安い価格を入札した企業が受注する事になるわけですが、この方式をとるとダンピングが発生し「1円入札」の様な事がおこってしまいます。そこで大抵の官公庁は、最低これぐらいの価格は必要だろうという「最低制限価格」というものを見積もっており、その価格を下回った企業は「失格」となるようにしています。

最近新しい制度として「低価格調査制度」という物があります。
これも官庁が積算をおこなって最低制限価格のような調査価格を決定するのですが、この価格を下回っても失格とはなりません。下回った価格で入札した業者は調査を受け本当にきちんとした工事ができるのであれば落札できるようになっています。
この制度「行政監察局」の平成7年6月の調査では調査官公庁の10%ほどが導入していると報告されています。最低制限価格の廃止はやはり公共工事の低価格化へ流れているようです。平成10年度に導入している熊本市では工事費1億7千万円の削減がはかれたそうです。 しかしこういった低価格化がおこると品質面で問題が発生する可能性がでてきます。低入札価格制度を導入した長崎県では業者間の価格競争が激化、調査のテマが相当かかるようでとうとう最低制限価格を復活させたようです。

[低価格入札制度についてのページ]
長崎県 http://www.jcnet.co.jp/kensetu/news/n9802/n980205_6.html
かまくら市 http://www.hamakko.or.jp/~dcj03216/kamakura.html
熊本市 http://www.kumanichi.co.jp/dnews/990801/kiji1.5.html
行政監察局 http://www.somucho.go.jp/kansatu/koujib.htm
 
●需要:マーケティングとライフサイクルコスト

「需要」というものはなんでしょうか。

1920年代のGMのマーケティング戦略というものがあります。GMはアメ車の会社ですが、消費者ニーズに基づいた製品作りをするため高級車から低級車まで、各価格帯間にすきまをつくらず、所得層に応じた製品ライン車を作りました。各価格帯同士の競合が起こらないようにし、所得層に応じた広告を行い、販売会社のフランチャイズシステムを導入する事にしました。この戦略の成功によりフォードが1,500万台生産したT型フォードは生産中止に追い込まれGMは業界首位の座にたったそうです。
 ここでは所得層に合わせた価格が先に存在しています。
値段が決まってから設計・製造に至るわけです。値段の範囲でおさまるようにコストダウンを行い最高の物を提供しようと考えるわけです。もちろん最低限の品質も確保します。走っている途中でバラバラになる車なんて売れませんから。

 建設業の場合、建売など建築の分野ではこのような考えが広くあります。「今の景気を考えると3,000万円以上の建売はうれんな。。」とか経営者は考えて作っていくわけです。さて、高コストと言われる公共土木の場合はどうでしょう。「これからの市役所の財政考えたらこの位の値段設定でやっていかないといけないな。。」とか考える会社あるでしょうか。
コスト高になる究極の原因は値段についてのマーケットリサーチを国も市役所も設計屋さんも建設業者も誰も行っていないということかもしれません。

 そこで考えられているのが「ライフサイクルコストの把握」というものです構造物維持にかかるコストを建設費のみならず維持管理費、廃棄処理費を含めて把握するという考え方です。当初の建設費が安くなっても維持管理に多額の費用がかかれば顧客にとってはトータルでは同じ事になります。ですのでそのトータルでかかるコストを把握しようと言う動きが出ています。

特にPFIでは維持管理も民間側に委託される事になりますので、ライフサイクルコストが民間側の費用になります。そうすると否が応でも全体をみたコスト管理をしなければならなくなります。建設CALS/ECのCALSはContinuous Acquisition and Life-cycle Support(継続的な調達と製品のライフサイクルの支援)でありライフサイクル全体を支援する考えになっています。


●最後に。。

 価格といものは非常に難しいものです。最近は予定価格の事前公表、事後公表を検討する市町村が増えています。今日も大阪で予定価格漏洩の件で捜査がおこなわれているようです。建造物のライフサイクルコスト全体をみて適切な価格、適切な品質を保てる入札制度の研究が相当必要ですね。。。。。

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