実行予算の機能
(中堅中小建設業における活用実態とあり方)
作成日 1999/10/30
改訂日 2000/12/27
Ver.1.5


財)建設業振興基金 建設業経理研究会では「建設業の原価計算にかんする調査研究報告書」という報告書をまとめています。これは無料で送付していただけます。興味ある方は読んでみると参考になるでしょう。この中で特に面白かった日本コンサルタント 竹内淳一氏「実行予算の機能〜中堅中小建設業における活用実態とあり方」を紹介します。

●コストダウンのための実行予算案

まず受注高が増加、平行であっても利益が大きく減少している事を指摘し原価管理の重要性を指摘しています。建設業の原価管理の中で重要な役割をもつ実行予算の対応状況は、元請企業は十分でないにしろ一応「実行予算書」を作成しているが協力会社(専門工事業者)においては作成している企業がすくなく見積金額算出根拠が明確になっていないそうです。
僕が普段中小建設業者さんから聞いている話と一致しています。
このため元請企業と協力会社の協調体制が作れずコストダウンに対する取り組みが不完全になっているとしています。この原因として

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コストダウンの対象になる要素として単価と数量の両方が考えられるが、単価におけるコストダウンは元請企業においてメリットがあるが、協力会社におていはその請負金額が圧縮されるわけであるからこの両者の利害は必ずしも一致せずそこに協調関係を期待することは極めて難しくなる。
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建設コストは景気低迷を受けて下がっていますが、元請会社のコストダウンといえば下請を叩く事、下請会社のコストダウンは手抜き工事の様な不健全な形が生まれています。僕はこのような状況を改善するためには協調関係を構築して協力してコストダウンをする必要があると考えています。
その方法についてここで指摘されていることは

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両者の協調関係を維持しながらお互いの利害を一致するためには、もう1つのコストダウン要素である数量を対象にした取り組みを具体化する事が必要になる<<<<

実行予算管理において数量管理までしていると回答した企業は55.4%だったそうです。数量に対象にしてコストを下げるということは、技能工に関する生産性を向上させる事これが重要なテーマだとしています。

実行予算作成自体は既に行われていますがうまく機能していない原因としていくつか上げています。その中で僕が重要と感じたのは次の2つです。
・コストダウンの目標数値が必ずしも明確に設定されていない
・材料・労務などに関する歩掛が会社として整備・標準化されていない


●原価統制とその方法

実行予算作成後、原価統制、差異分析を行わないとコストダウンはできません。そこで重要なポイントを指摘しています。

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予算管理の目的はコスト縮減にあるわけであるが、このコストという数値を金額で評価していてはコスト縮減は期待できなくなる。というのも金額は単価と数量の掛算によって得られる物で結果としての数値であって、コスト管理する対象になるものは単価と数量である。
(筆者略)
数量ベースによる予算管理を厳密に実施するためには予算作成と実績収集における標準化が不可欠になってくる。(中略)予算作成における標準化というのは言うまでもなく労務歩掛の標準化である。即ちとび職・大工・作業員など職種別にそれぞれの歩掛の標準値を整備することにより予算作成段階の人工の設定がより正確になる。
次に実績収集における標準化というのは、実績歩掛をとるための「日報」を標準化することである。
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相当具体的な点を指摘しています。労務歩掛の標準化及び日報の標準化がキーであるとしています。ここまで来れば情報システムを導入して標準化する事が可能ではないでしょうか。原価管理システム・日報システムを導入する事が鍵になりそうです。

工事担当者の管理努力によって縮減可能な費用は「労務費」とています。「材料費」「現場経費」はスケールメリットを生かせれば縮減可能ですがこれは売上高を増大させるつまり営業担当者の努力次第でもあります。「外注費」については削減目標を出すと担当者は発注単価を下げる事ばかり考え協力体制が崩壊することを指摘しています。
残ったのは「労務費」段取りを徹底させるなどで一人あたりの生産性は向上するだろうとしています。ところが工事担当者は「協力会社には請負でやらせているから、このような生産性向上努力はあまり意味がない」とここが足枷になっていると指摘しています。

コスト縮減を実際に行う人は工事担当者です。コスト縮減がうまく進まないのは工事担当者の手に余っている物があるということです。経営者としては早急にコスト縮減を行わなければこの厳しい環境を勝ち残れません。経営者は工事担当者を助けるため投資を行わなければならないということです。この調査研究書で指摘している物は「数量を対象として原価管理で協力会社と協調体制を作る」「労務・材料歩掛の標準化」「日報の標準化」「段取りを徹底して労務生産性を向上させる事」です。原価管理システム・日報システム・工程管理システムこの3つが投資しなければならないポイントではないでしょうか。

●実際のところ
メール及び実地で様々な御意見いただきました。まず元請側ですが、(土木)「工期を短くする努力をすると経費を浮かすことができ有利だ」という意見と(土木)「官公庁工事の場合工期を短くしても有利にならない」との両方の意見を聞きました。工種や状況によってかわるようです。(発注者側)「早期に事業を完成するには多額の工事費が必要である。」という前提があるようです。官公庁はVEや提案型の入札などの研究も必要でしょう。

 一方協力会社側の方は(型枠)「m2単位で単価は決まっているので常識的なスピードで施工すればゼネコンから文句は言われない。自分の方は早く終わる方がいい」(鉄筋)「ゼネコンはわざと着工を遅らせて経費を浮かせているようだ。」(設備)「早く終わらせると人数工と金額が開いているため、値引きを要求してくるところもあり早くやるとバカらしい結果になることもある。」

さまざまな意見が混在しています。発注者側のニーズ、元請のニーズ、協力会社のニーズがばらばらのようです。
基本的に企業は顧客のニーズに応えるために存在しています。よって顧客(官公庁)の方は建設会社の技術力を引き出すような入札制度の整備、CMなど評価について体制強化が必要。建設会社側は、協力会社への評価体制の整備、PMなどによる施工情報の共有体制の再構築が必要ではないかと思いました。この掲載についての情報収集はなかなか難しく分からないことが多く、いまだ分からないことだらけです。是非御意見、御教示ください。
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